
2008年04月18日 12:48日
新入生の皆さん「ご入学おめでとうございます!」もうそんな季節なんですね。私も日本に戻ってから3回目の春を迎えました。最近は年々強力になる「花粉」と戦いながら毎日を奮闘しています。
さてそんなわけで、2年前に始めさせていただいた「トレーナーへの道」そして昨年の「トレーナーの現場から」に引き続き「今年は何にしようかな?」と考えた挙句、結局ベタなネーミングの「Trainer’s eye」に決定させていただきました。別に誰が決めたわけではなく自分で勝手に決めただけなんですけど・・・
ということで、今年度から始まる「Trainer’s eye」をよろしくお願い致します!そしてその内容としては、色々なスポーツをトレーナーの眼から見てどんな見方ができるのか?またそこからどんな考え方が生まれて行くのか?ということをお話できればと思っています。
さあそれでは、記念すべき?第1回はやっぱり「野球」になってしまいますが、野球の投手の動き(ピッチングフォーム、練習や試合の動きなど含む全て)をトレーナーの眼から見るとどんなことが見えるのか?ということでスタートさせていただきます。
先ずこれは、今年のキャンプ見学時に撮った写真ですが、キャンプ前半で肉体的に疲労が出始めた頃です。その為、失礼ながら石井投手のブルペンでの状態も悪く、その影響が投球フォームにも映し出されていました。
投球開始時、右足を上げ軸足(左)に体重を移していわゆる「タメ」をつくる体勢から徐々に踏み出す足に体重を乗せて行くところです。この時点ではまだ左側に体重を乗せていなくてはならないわけです。そして着地した右足に体重を移しながら身体を捻りその力を体幹から左腕に伝達させてボールをリリースします。
この時、本来ならばボールを持った左腕の肘の位置が肩より上になくてはなりません。しかし、この写真で見ると足を上げ始めた時点から体重の移動だけでなく右肩を上げ左肩を下げることで体重移動を軸足側に移してしまっていました。そのために踏み出し足が着地して捻りを加える時点で上半身のバランスが取れずに左肘が下がる結果となってしまったのです。
石井選手は身体全体の力が強いので、この状態からでも最終的に肘を上げてきてボールをリリースすることができます。しかし、これは無理矢理体勢を整えているフォームであり理想形とは言えません。結果、下半身のバランスが崩れ内側よりも外側に力が入ってしまい、そこから上半身を立て直して上肢の使い方で帳尻を合わせてしまうのです。 このような状態から見えてくることは、下肢で言うと腸脛靭帯付近に強いストレスが加わり、膝と股関節にダメージをきたしやすくなり、腰痛を起こし易くなります。また上半身の帳尻合わせにより、背筋群のストレスと肘が下がるところから引っ張る動作によって肘関節に強度なテンションがかかり、肩関節では上腕二頭筋腱長頭腱付近に障害を受け易くなってしまうことが予想されます。
現実にこの時期、下肢外側の緊張が強く現れ骨盤の開きと前傾が起こり、腰痛症状がありましたし、左肩の軽度な前方突出と左肘内側靭帯付近の緊張が強く現れていました。このような状況を選手本人と話合いながら、治療やコンディション調整を進めて行くことでその症状は緩和され正しい身体の動きにつながるようになります。
ここからの写真では、まだ万全とは言えませんが状態が悪かった時から比べ、体重移動の際の足の使い方や体幹の使い方が安定するようになり、肘や肩の位置が良い状態に近くなってきています。このような、コンディションを続けて行けば、故障のリスクが低くなる上にパフォーマンスも向上するようになるわけです。
ざっと説明してきましたが、トレーナーが選手の練習やプレーを見るということには多くの意味が含まれているということが理解できたのではないでしょうか?ただ単に選手の話を聞き予想だけでアプローチしていては、選手も良い結果を残すことはできないのです。そう考えるとトレーナーの仕事は、色々なことに関わりを持てて楽しいと思いませんか?
でもここでひとつだけ約束して下さい!選手のためにトレーナーができることは何でも行いますが、選手が出した良い結果は選手自身のものです。決してトレーナーが作り出したものではありません!(サポートはしていますが)ですから「俺が面倒を見たからこの選手は活躍した!」という考えは持たないで下さい。トレーナーの仕事を評価してくれるのは、トレーナー自身ではなく選手やそれを見ていた周りの人たちがしてくれることですからね!