Trainer’s eye 第3回

2008年07月01日 14:36日

前回までのお話は、私の専門分野である「野球」を題材にして解説させていただきました。今回も「野球」となるとさすがに「またか・・・」という感じになってしまいますので、ちょっとだけ違うスポーツにスポットをあててみましょう!

とは言っても、基本的に自分の趣味で強引にお話させていただいていますので・・・今回は皆さんとは馴染みの薄いであろう「ゴルフ」をテーマにさせていただきます。

「ゴルフ」と聞くと、おじさん達のお遊び的スポーツというイメージを持たれると思いますが、意外とそうでもなかったりするものです。(でもそういうイメージの方が合っているかもしれません)
最近では、男子プロゴルファーに彗星の如く現れた「石川 遼」選手のように10代でもゴルフというスポーツをプレーする環境は出来上がっているようです。

さて、ゴルフというと10数本のクラブをその環境や状況によって使い分け、18ホールの決められた回数をどれだけ少なく上がれるか?という単純(単純と言ったら怒られるかもしれません)なスポーツです。単純だからこそ難しいのですが・・・

ゴルフは、その状況・環境によって使うクラブが変わります。使うクラブが変われば当然その打ち方も変わってくるわけです(根本的な打ち方は変わりません)長い距離を飛ばすためには、そのクラブも長いクラブになり打ち方もできる範囲でのフルスイングになるわけです。

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フルスイングするためには、体幹が安定しなくてはなりません。下肢の体重移動・膝の使い方・腰のまわし方・腕の使い方と上肢への連動です。これはある種野球のバッティング理論に似通っているところがありますが、実際にはどちらかというと野球の投球動作の方が近いと言われています。一番近い動作としては、テニスのバックハンドの打ち方かもしれません。

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「打つ」というイメージが「野球のバッティング」というものに近づいてしまうのでしょう。しかし、ゴルフのショットは「打つ」のではなく「投げる」と解釈した方が理解しやすいと思います。アドレス(ゴルフの打つための姿勢)に入り、右足から臀部に体重を移動しパワーを蓄えて(あくまでも右打ちを対象にしています)いる間に両腕を右肩方向にあげてクラブのヘッドを後頭部の方まで捩ります。

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この状態は投手が軸足に体重を乗せてテークバックした状態そのものです。ここからダウンスイングに入り、右側に蓄積されたパワーを体幹を軸にして膝で調整しながらクラブを振りおろしインパクトへと向かいます。

インパクトした後はそのパワーを前方向にぶつけるためにフォロースル―に入ります。これがおおまかですが、ティーショットでフルスイングする時のメカニズムです。このような動きの中で、考えられる故障・障害は「膝・腰・脊中・頸・手首」といったところでしょう。

実際にゴルファーに多い症状としては、腰痛・頚部痛・背筋痛・膝痛が大半を占めています。また、ゴルフという特性から見ても一方向への動きが主となるために、左右のバランスが崩れていることが非常に多く見受けられます。

このようなことから考え、トレーナーとしてゴルファーにアプローチする際に注意することは全体の筋バランスを整え、ゆがみが発生して故障の原因となっている部分を治療するとともに、体幹を強く保てるようにコンディショニングすることです。 また、筋力の弱い一般アマチュアゴルファーに多い障害としては「ゴルフ肘(テニス肘)」があり肘関節の外側上果に炎症症状が現れます。トータル的なコンディショニングを行うことが前提とはなりますが、部分的にも基礎トレーニングは必要となりそうです。

ゴルファーのコンディショニングとして重要なポイントは「安定した体幹」を作ることと、安定したアドレスを持続させるために「肩甲骨の動き」を作ることが主なところです。18ホール約7kmを歩いてプレーして行く間に体幹のブレと肩甲骨の動きが固まり易くなってしまいます。

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このようなことを防ぐために、日常から腹筋群・内転筋群の強化と肩甲骨の可動域確保がとても大切になってきます。また、ゴルフはメンタル的な要素がとても強いスポーツですから心理学的なアドバイス、特にポジティブな考え方や切り替えをスムーズにできるように指導していくのもトレーナーの大事な役目です。

他にも色々なポイントはありますが、トレーナーとして本来コンディショニングの目的となっている、トレーニング・ケア・栄養・メンタル・回復の全てを発揮できるのは、ゴルファー相手なのかもしれません。

広報室
湘南医療福祉専門学校