トレーナーへの道 第5回

2009年04月21日 13:46日

Hi, Dennis How are you doing ?  Ⅰ`m doing good !!

唐突ですが、この会話が一日の始まりを表す言葉・・・というか、お決まりの挨拶です。まあ 日本で言えば「おはよう」とか「こんにちは」という感じですが、アメリカではこんなお決まりの言葉にもなんとなく味があるというか・・・ただ挨拶をするだけではなくて相手の体調とか気分とかを確かめながらも共に戦う仲間として今日も一日よろしく頼むよ!という意味合いも含んでいるわけです。

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選手たちから絶大な信用を得ていたヘッドトレーナー、スタン・ジョンストンとアシスタントトレーナーのマット・ウィルソン

アスレティックトレーナーとしての仕事は、ただ単に選手のコンディションやパフォーマンスを上げるためのサポートだけではありません。こういった単純な会話の中にも「選手とトレーナーの信頼関係が成り立っている」ということが読み取れませんか?

簡単に言ってしまえば、日常の普通の会話だとしても相手を気遣って話ができることイコールすでに信頼関係が成り立っているということです。この信頼関係の有る無しはその後の仕事に大きな影響を及ぼします。例えば、フィジカル的なコンディショニングの指導をする場合に信頼関係があれば目的意識が明確になりパフォーマンスを上げたり、モチベーションを上げたりすることが容易になってきますが、信頼されていないトレーナーがいくら理論を振りかざしても選手のパフォーマンスやモチベーションが上がるとは思えませんよね。

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選手のためにできることを行うのがトレーナーの仕事です

トレーナーが色々な知識や技術を身につけ、キャリアもスキルも高いレベルにあったとしても人間として信頼されていなければ、何の役にも立たないということです。私が実際に経験してきた現場においてもこのようなことは起きています。ドジャースのメディカルスタッフの中にはとても高い知識と技術を持った理学療法士がいましたが、彼の欠点は選手を見下してしまうことでした。

そうなると、選手はどんどん彼から離れていってしまいせっかくの知識と技術を有効に使うことができなくなってしまいました。逆に彼より現場でのキャリアは少ないけど選手たちを思う気持ちでは超一流のアシスタントトレーナー(スキルのレベルはとても高いです)は選手たちから受ける信頼は絶大で、その効果も手伝いフィジカルでもメディカルでも良い結果を生んでいました。

アスレティックトレーナーとして必要な知識・技術を身につけておくことは絶対条件ですが、良いトレーナーとして活動するためには人間としての触れ合いを大切にしてどれだけ相手の気持ちになって考え行動してあげることができるか?ということが一番大事なポイントではないでしょうか。

メジャーリーガーとは言え、相手も人間ですからその根本にあるのは‘人として‘ということになると思います。但し、甘やかすということではありません!相手を真剣に思うからこそ間違ったことには「ダメ」と言える付き合いにならなくてはいけません。トレーナーと選手の関係は、信頼関係があっても友達ではありませんから。

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信頼関係のあるチームは結果にも結びつきます(2004年のシーズン161試合目でナショナルリーグ西地区の優勝を劇的なサヨナラ勝ちで決めました。この年のドジャースは戦力的にはあまり良くありませんでしたが、信頼関係や団結力は近年では最高のチームでした)

私が、ドジャースに在籍した4年間で学んだことの中で‘人として‘ということが一番大きなことだったかも知れません。トレーナーを目指す皆さんにはしっかりとした知識の他に‘人間として‘ということを学んで欲しいと思います!

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移動中の飛行機の中でも選手たちとのコミュニケーションは欠かすことのできない大事な仕事です。(アシスタントトレーナー、マット・ウィルソンと石井選手)

広報室
湘南医療福祉専門学校