
2009年04月21日 13:53日
筆者がプロを目指していた大学時代(首都大学リーグ 対 筑波大学戦 川崎球場)
第8回目までのトレーナーへの道は、私自身がトレーナーとして経験や実績を積んでから得た事などのお話が中心となっていました。今回からはそれ以前のことについて少しご紹介してみようと思います。
誰だって通る道ですが、私にも‘トレーナー初心者‘時代があったわけで・・・どんな世界においてもどんな人でも「最初」というものが必ずあるものです。ただ、私にとってこの初心者時代があったからこそ今の私があるということは間違いありません。最初からヤクルトやドジャースのトレーナーとして信用を得た仕事をしたわけではありませんから。
私のトレーナーとしての始まりは、自己紹介でも書きましたが母校である城西大学の野球部です。私も一応この野球部では1年生からレギュラーとしてプレーし3年時には11年ぶりとなる1部リーグ復帰、4年時には主将として1部定着の原動力となったわけです(誰も言ってくれないと思うので自分で言います)。
ただ、ケガや故障が多かったことでその後の野球人生はプレーヤーとしてではなくトレーナーとして歩んでみようと思ったのがきっかけでした。自分がケガを知っていることで選手の気持ちを十分に理解できると思ったからです。それに自分と同じようにケガでその後の野球人生をあきらめて欲しくないという考えもありました。
筆者が延長戦の末サヨナラのホームを踏んで1部リーグ残留を決定づけた 対 明治学院大学戦
そんな色々な想いを含めて私はトレーナーとしての第一歩を踏み出したわけです。とは言え、まだまだ「初心者」ですから私が持っている知識はテキストに書いてあることばかりで、唯一自分の故障暦だけが頼りでした。そんな状況でも選手たちからみれば「初心者」ではなく「トレーナー」ですから、身体を強くしたい、野球が上手くなりたい、ケガを治して欲しい・・・そういう切な思いを持って私の元へとやってきてくれるのです。
「この気持ちに応えられるようにならなくては」そう考えた時に自分にできることは「とにかく選手一人ひとりを良く知ること」だと思い、どんな些細なこともノートに書き留めることから始めました。そうすることによって、選手個々のコンディションやケガの状態など、またトレーニングや治療の効果というものが少しずつ明確になっていったのです。
トレーニングや治療の効果が出ているのか、それともまったく出ていないのか、自分が選手に対して施したことの全てを現実の結果として受け止めるひとつの手段となったわけです。人間は皆千差万別ですから、必ず同じように結果が出せるわけではありません。しかし、このような資料が自分の実績として残せることでどのような方向性に向けたら良いのかという大きな目安にはなります。これが良い結果を出すために必要な経験となってくるわけです。
実際に、同じようなケガをしてしまった選手に対して同様の方向性を示すことで復帰までの道のりが明確になったことが多々ありました。このような経験は毎日数十人の選手をみることができる素晴らしい環境にあったからだと言えます。
こんな素晴らしい環境で仕事を覚えることができたという点においては、私は幸せ者だったと言えるでしょう。ただ、正直に言ってこの野球部だけの仕事では生活していくことができなかったというのも事実です。ですからこの頃からの7年ほどは2~3の仕事を掛け持ちして稼ぎながらトレーナーのプロフェッショナルになるための努力を行ってきました。
プロ野球のトレーナーとしての第一歩を踏み出したヤクルト時代(アリゾナ州 ユマ)
この頃の生活リズムは本当に最悪だったと思います。朝から夕方までは病院のリハビリ室で実戦的な勉強を兼ねてアルバイトし、その後野球部のグラウンドと合宿所で練習と治療を消灯時間まで行ってから、個人契約している人の家に出向きトレーニングと治療を行う日々が繰り返されていました。さらに野球部のトレーナーを始めてから3年後には大学側からの有難い?要請で、女子駅伝部の仕事まで増やしていただいてしまったのです。
本当に肉体的には辛い7年間でしたが、自分がトレーナーとして必要な経験とスキルを得るためには大切な7年間であったと思います。この7年間に学んできたこと、経験してきたことが何時しかトレーナーとしての自信となり、その後大きく羽ばたけた土台となったと言えるでしょう。
偉そうに聞こえるかもしれませんが、この時期を経験し乗り切ったからこそヤクルトでもドジャースでも信頼される仕事が出来たと思います。もし、私にこのような経験が無くてプロ野球やメジャーの世界に飛び込んだとしたら・・・ただただ舞い上がって何一つ仕事出来ずに1年でクビだったのではないでしょうか。
リーグ優勝を決定させた試合後にトレーナーでの記念撮影 横浜球場
トレーナーを目指す皆さん!ライセンスを取ったからと言ってすぐに仕事ができるほど甘くはありません。厳しい言い方をするようですが、仕事としてトレーナーを選んだ以上はあなた自身も‘プロ‘であるということを自覚して下さい。この誰もが通る「初心者」時代を有効にかつ有意義に使えるかどうかで本当のプロになれるかどうかということが決まるのです。本物になれるかどうかは、あなたの考え方と行動できまってしまうということを忘れないで下さいね。