トレーナーへの道 第11回

2009年04月21日 13:54日

2007年、新年を迎えて皆さんはどのようにお過ごしでしょうか?だいぶ遅くなりましたが、「明けましておめでとうございます」「今年も宜しくお願いします!」

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メジャーリーグのオープニングデーではトレーナーも選手同様に紹介され地元では温かい声援をいただきます。

さて、前回はスプリングトレーニングのお話で終わってしまいましたから、今回はレギュラーシーズンのお話です。長いスプリングトレーニングが終わるといよいよ本拠地のロサンゼルスに戻ってきます。正確に言うとオープン戦の最後の5試合くらいは地元周辺で行われるのです。

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オープニングデーのセレモニーでは色々な事が行われファンを楽しませてくれます。これは、始球式のボールをパラシュート部隊が運んでくれているところです。

メジャーリーグでは、日本と違ってシーズンの開幕前日までオープン戦を行えるので感覚的には「オープン戦の流れのままいつの間にかシーズンに突入していた」という感じなのですが、それでもOPNING DAYのセレモニーが始まると少しずつ気持ちが高まってきます。見た事がある人もいるかもしれませんが、セレモニーではトレーナーの紹介もあり全ての紹介が終わってアメリカ国歌斉唱が一番盛り上がる頃に戦闘機が編隊を組んで飛んできます。グラウンドに整列した我々の頭上を戦闘機が通過する時の何とも言えない気持ちの高ぶりは・・・もう最高です!

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国歌斉唱では様々な著名なアーティストが歌いに来てくれます。

本題に戻りますがここからが長~いシーズンの始まりになるのです。先ずは通常一番多いナイトゲームでの1日を紹介してみましょう。メジャーリーグの試合開始時間は広い地域性や時差の問題、またテレビ中継の絡みなどもあり開始時間が非常に中途半端です。大抵の場合ナイトゲームだと夜7時5分試合開始(この5分の意味がよく理解できないのですが・・・)になり、ホームチームの全体練習が午後3時15分頃になります。

これを踏まえて、トレーナーは大体お昼過ぎに球場入りします。私の場合トレーニングルーム(トレーナーズルーム)の掃除と治療機器・テーピング類・選手用ドリンクタンク(水とパワーレード)アイスバッグ・ウォールプール(温度42℃)・タオル・薬品類・トレーナーキッド・紙コップなどの準備がありますから12時にはクラブハウスに入るようにしていました。

そして、午後1時15分からトレーナーミーティングを行い全選手(28名)の状態チェック・ケガをしている選手の状態と今日のトリートメント方針の確認作業を行います。これが終わる頃には何人かの選手がトレーナールームにやって来るので、その選手達のコンディショニングやトリートメントが練習開始直前まで行われて行きます。

練習中はトレーナーズオフィスに残り書類整理を行うトレーナーと練習に参加して練習中の選手のコンディションをチェックしながら練習の手伝い(球拾いやキャッチボールの相手)もします。私は、野球経験者ということもあり(それでも素人ですから)投手たちの専属?ブルペンキャッチャー的な仕事をさせられていました。ただこれも自分にとっては非常に良い思い出でメジャーリーガーのボールを捕ることができるなんてそうそうは無いですからね!

それはさておき、練習が終わると今度は試合の準備にとりかかります。テーピングを巻くトレーナー、ストレッチをするトレーナー色々役割はありますが、私はまずリリーフ投手たちのマッサージやストレッチ、コンディショニングを担当していたので一人20~30分くらいでどんどん仕上げて行かなくてはなりませんでした。

これが一段落するともう試合開始直前になります。メジャーリーグでは試合前に必ず国歌斉唱が行われるのでこのセレモニーの時にはトレーナーもベンチ前に整列しなければなりません。そしてチームのルールでは、試合中は全選手がベンチで応援しなくてはならないので本来は試合中のトリートメントはできないのです。

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2004年の開幕戦は野茂投手が開幕投手として活躍、ここから熱戦の火蓋が切り落とされます。

しかし、私の場合投手陣のコンディショニングを担当していたので、たった一人では全ての選手に対応できないという理由をスタッフに理解してもらいゲーム中に先発投手たちのコンディショニングをさせてもらうことができました。自分で言うのもおかしい話ですが私がこのスタイルを確立していた時期のドジャース投手陣は本当に故障・ケガが少なかったと思います。

実際に私がこの仕事を始めてからの投手陣の成績は上がっていましたし、ローテーションが崩れるということも少なくなりました。その結果、年々チームの順位も上がり3年目には地区優勝することができたわけですから、少なからずこの成績に貢献できたと自負しています。

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ドジャースのクローザー「エリック・ガンニェ」投手が出てくればもう勝ったも同然!Game Overは彼の代名詞です。

先発投手たちのコンディショニングがない場合はもちろんベンチで応援します。ここでは試合中の様々なアクシデントに対応したり、ゲームプレーヤーにしてあげられることを行ったり、サブプレーヤーのサポートをしたりしながらチームの勝利を願い続けます!ただトレーナーの職性か「とにかくケガしないで無事に終わってくれ」という気持ちの方が強かったかもしれません。

ゲームが終了すると、プレーを終えた選手たちのクールダウンや必要に応じてトリートメントを行い、その全てが終わってからレポートをヘッドトレーナーに提出して後片付けに入ります。片付けが済むと遅い夕食をクラブハウス内の食堂で摂りシャワーを浴びてようやく帰宅です!

この時点で大体、夜11時頃になっています。球場から自宅までは車でおおよそ30分かかり、やっと家に着くともう12時です。そして「さあまた明日頑張るぞ!」と気合を入れながらいつの間にか睡魔に襲われて睡眠へと突入していくのです。

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長いシーズン中では色々なハプニングが・・・

これが、ナイトゲームでの1日ですがシーズン中はこれにデーゲーム(午後1時5分試合開始)や遠征なども加わりますから、自分で考えている以上にあっという間に1日が過ぎていってしまうのです。ですから、トレーナー各自がしっかりと自分の役目と仕事を認識して行動しなければなりません。

自分の立場や仕事・役目を理解していないと、無駄に1日が終わってしまいますからね。これからトレーナーを目指す皆さんも、もちろん仕事をしっかり覚えなくてはなりませんが、自分のやるべき事を理解して仕事をする癖を今から身につけておいた方が良いかもしれませんね。

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試合後はアイシングなどのケアを行います。石井投手が勝利投手となり、肩・肘・腰にアイスバッグを巻きながらチームメイトを出迎えます。

今回もやっぱり書ききれなかったので(本当はもっと色々な裏話があるのですが・・)その分は次回以降ということで・・・それではまた!

広報室
湘南医療福祉専門学校