Trainer for life 第11回

2011年02月28日 11:11日

前回は大まかな日米春季キャンプの違いを説明しましたが、今回は野球以外の部分も含めてどんな違いがあるのだろうか?ということをお話します。
前回お話したように、春季キャンプは今年のチームの行方や選手たちの今後にとって重要になるイベントです。ですから、このキャンプを支えるスタッフやトレーナーたちにとっても非常に責任重大になるわけです。これを上手く息抜きしながら行うには?というお話です。

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日本でのキャンプ中のトレーナーの仕事は、朝の散歩や体操から始まります。朝7時に所定の場所に集合し全員で散歩したり体操したりするのですが、ここでのトレーナーの役割は「選手一人一人の朝の体調を見極める」為に非常に重要なポイントです。
朝起きて体調に変化がないか?顔色はいいか?・・・色々なところに注目して確認します。
少しでもおかしい?と感じられたらそっと選手に近寄り話しかけて状態を探ります。

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その後、朝食を摂る時にも選手たちがきちんと食事しているか?バランス良く摂れているか?食欲は保っているか?・・・
ここでもチェックしまくりです!
バランスが悪ければ注意して改善させなくてはなりません。バイキング形式なので、選手たちが摂る量や内容は一目瞭然です。

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その後、当日のスケジュールを確認し宿舎出発前に必要な処置をホテルのトレーナールームで行い(テーピング・ストレッチ・軽いマッサージ・物理療法など)出発です。
球場に到着したら練習開始前までにトレーナーキットの確認と設置、ドリンクタンクを作って設置、グランドコンディションの確認、球場トレーナールームで必要な処置を選手たちに施し監督・コーチへ選手のコンディション報告など行い練習開始です。

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練習が始まるとトレーナーたちは各練習パートに分かれ、自分が担当する練習場所で選手たちの動きを見守ります。またできる範囲で練習の手伝いもします。
アクシデントが起こればすぐに対応できるように、常に目を光らせているわけです。

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練習が終わった選手たちが増えてきたところで、何人かのトレーナーは選手と一緒にホテルに戻りトレーナールームでメンテナンスを行います。
全ての練習が終了したところで、全トレーナーがホテルに戻りメンテナンスに加わりこの作業が夕食前まで続きます。
夕食に入る前にその日の練習での報告があれば全トレーナーでミーティングを行い、夕食会場に駆け付け朝と同様に選手たちの食事に目を光らせるのです。

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最近は変わってきましたが、私が在籍していた頃は夕食後に夜間練習を行うため2名のトレーナーが夜間練習に帯同し残ったトレーナーが夜間練習に参加できない故障選手や夜間練習を行わない投手たちのメンテナンスを行います。
夜間練習が終了してから時間の許す限りその日に必要な選手のメンテナンスを全て行い1日が終了しますが、これが大体夜12時くらいまでかかるのです。もちろんトレーナーミーティングも行いますので・・・

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日本のキャンプはおおよそ4勤1休ペースで行われます。選手のみならずトレーナーの楽しみは休日前の練習日です!もちろんうかれているわけではありません。休日前は全体練習が終わり夕食前までで全ての仕事が終了します。
その後、ホテルでも夕食は用意されていますがほとんどの選手やスタッフは外食に出かけリフレッシュしに行くわけです。
トレーナーたちも気分転換を兼ねてトレーナー同士で夕食に出かけたり、たまには選手たちから夕食のお誘いを受けコミュニケーションをとり信頼関係を築きにいきます。

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また、休日は夜間練習前までが休日となるのでそれまでの間に街に買い物に出たり、キャンプ地の名所を巡ってみたりします。
他にもここでは大きい声で言えないような息抜きもあります・・・
身体には良くないけど「ぱち●こ」したり「まー●ゃん」したりなんていうのもあり?です・・・そんな息抜きをしながらも仕事に入ったら「気持ちを入れ替えて」選手のためにできる仕事に取り組んでいるわけです。

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一方アメリカでは、練習のスタートは早いです!日本と違い同じ宿舎にいるわけではないので(選手たちや希望するスタッフは自分たちでアパートを借りて住んでいます)集合時間までにクラブハウスに来ることになります。
通常の練習開始は午前10時で、全体ミーティングは9時30分からです。おおよそ集合時間はその1時間くらい前までということになっています。
(9時30分にはユニフォームを着ていなくてはなりません)
しかし、他にもルールがあり「故障者選手」は全体練習が始まる2時間前に練習を始めなくてはなりません。つまり朝8時練習開始になりますが、故障選手ですから練習前にトレーナーのチェックを受けなくてはなりません。
結果、故障選手は朝7時にトレーニングルーム(日本で言うトレーナールーム)に集合します。

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トレーナーはその選手たちのチェックから始めるので、クラブハウスに朝5時30分に集合し準備とミーティングを行いそこから仕事が始まります。
朝食はクラブハウス内のフードルームで各々時間を見つけて摂ります。場合によってはパンをほおばりながら仕事することもあります。
そんなことを許してくれるあたりがアメリカっぽいですが・・・

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全体ミーティングにはトレーナーも参加します。ミーティング終了後グランドに出て、練習が始まります。
日本同様各練習パートに分かれトレーナーもそれぞれに分担して練習をチェックします。ただアメリカの練習場所はとにかくでかいので(メインスタジアムの他6面の球場と2面のサブグランド、室内練習場、室内・室外ブルペンなどがあります)トレーナーはゴルフカートに乗ってあらゆるところを行き来します。また行動範囲が広いのでトランシーバーを持って連絡を取り合いながら次に行く場所を決めていきます。

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全体練習は、午後2時頃までに終了するのでその後クラブハウス内のトレーニングルームで選手たちのメンテナンスを行い、全選手のレポートをまとめて報告の必要がある選手のレポートを抜き出して監督・コーチ・球団に資料として配布し、トレーニングルームを清掃して終了します。

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日本と違い休日はないので、早く終わった日は早く帰るのがアメリカンスタイルです。
また毎週日曜日の夜に球団主催のボーリング大会が開かれたり、バーベキューデーがあったり、選手たちがウォーミングアップをしている時間帯を利用してスタッフたちだけで行われる色々な種目(自転車レース・水泳大会・バスケットボール投げ・野球のノックバットを使って目標物に打球を当てるフンゴコンテストなど)のオリンピック大会がひらかれたりして、その結果チーム戦(トレーナーチーム・広報チーム・クラブハウススタッフチーム・IT部門チームなど)での優勝を争うことや個人成績で賞品がもらえたりします。

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ちなみに私は自転車レースとフンゴコンテストで活躍し映画鑑賞券とレストランの食事券をいただきました。

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まあそんな息抜きをしながら辛く長いキャンプを乗り切っていくわけです。
アメリカでは練習というキャンプは2週間ほどで終わりすぐに実戦となるオープン戦に突入します。それでもトレーナーは故障者選手から仕事が始まるので朝5時30分からというスタイルは続きます。
しかもオープン戦は広いフロリダ州の中を日帰りで移動しながら行われたり、デーゲームだけでなくナイトゲームも行われるので、遠征があった場合全員が帰ってくるまでトレーニングルームで待機しています。

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私は基本的に、選手たちのメンテナンスが多いので遠征には帯同せずクラブハウスで残留していましたから、通常業務から始まり遠征組が帰るのを待つと時折終了が夜3時頃ということもありました。「2時間後にはまたクラブハウスに来ているんだな・・・」よくそんなことを考えたものです。

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他にもトレーナーたちは音楽が大好きで、特に私が在籍していた時のヘッドトレーナーは大のカントリーソング好きでした。
なので朝5時30分からトレーニングルーム内では常にカントリーソングが流れ、テレビもカントリーミュージックチャンネルしか流さないくらいでした。
最初は嫌だったカントリーミュージックもあれだけ毎日聞かされていると、完全に洗脳されてしまい今ではカントリーミュージックが無いと落ち着かないくらいです。
そんな経験から今の私の会社である「ルートヴィガー」では常にカントリーソングが流れています。きっとスタッフたちも「なんなんだよ!」と言っているに違いありません。私が感じたように・・・でもきっとカントリー無しでは生きていけなくなると思いますよ!

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少し道は外れましたが、こんな状況で行われているのもキャンプなのです。
厳しい戦いの裏側には、少しほっとできるようなことも存在しています。
でもそれはプロフェッショナルとしてのメリハリをつけた仕事ができる集団だからだということを忘れないで下さい。
仕事ができないのに楽しいこと好きなことだけをやるのは、プロとは言えません!
これからトレーナーを目指す皆さんもこのことだけは絶対に忘れないで下さい!

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広報室
湘南医療福祉専門学校