第6回 More than just vigor

2012年09月12日 10:51日

今回も野球ネタ!メジャーネタでいきます!
ダルビッシュ選手、メジャーリーグ・チームルールに続き「知られざるメジャーリーグの裏側」に迫ります!

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日本とアメリカでは文化の違い習慣の違い宗教の違いなどが当然あります。
日本はどちらかというと「仏教」を重んじる国ですが、アメリカではキリスト教を重んじていますよね。
でも日本人選手たちは、シーズン中に「神様・仏様」に頼ることは少ないと思います。
(宗教は個人の自由ですから、個人的に活動している選手はいるかもしれませんが)どちらかというと、シーズン前にチーム全体として「必勝祈願」を行うことくらいです。

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アメリカではチーム全体での「必勝祈願」は無く、一年通して「キリスト信者」の選手たちだけでの「お祈りと懺悔」が行われています。
これを「サンデー・チャペル」と呼んでいます。
名前の如く毎週日曜日に牧師さんが球場に来てお祈りをします。牧師さんが来れなくてもキリシタンで牧師さんの資格を持つ?(確かな情報ではありません)選手やコーチが代表になりチャペルを開催するわけです。

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選手たちは、日曜日でも試合がありますから教会に行く時間が無いので、代わりに球場で行おうということです。
(チームの4割程度の選手がキリシタンでした)場所はだいたい球場内の空き部屋かウエイトルームの一角を使用して行われています。
トレーナー室の近くで行われていることが多かったので、私もその場に遭遇することがしばしばありました。
(ちなみに私は無宗派です)

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(この写真は投手ミーティングです)

最初は、何故ここに数人の選手が集まり深刻な表情で黙りこんでいるのか?
理解できず、ついついいつもの調子で陽気に絡もうとしたのですが、さすがに空気を読む私としても「これは茶々を入れてはいけない!」と自覚し素通りしたのを覚えています。

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この一部の選手たちが集まり行われている「サンデー・チャペル」の内容を理解した時の私の第一印象は「ウソでしょ?冗談でしょ?」というものでした。
何故なら、そこに集まっているメンバーを冷静に見ると「試合中選手自身に腹の立つようなことがあると、ベンチに戻ってきてからドリンクのタンクを投げ倒したり、バットでゴミ箱や周りの物を破壊したりする選手たちばかりだったからです・・・

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壊されたもの・・・

冷蔵庫・・・通路上の蛍光灯・・・球場内で使われなくなったロッカールーム・・・球場内に設置してある消火用ホースの入れ物・・・ベンチ内のドリンクタンク・・・ベンチ内もしくはクラブハウス内のごみ箱・・・クラブハウス内の壁・・・その他色々・・・

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また、壊されはしませんでしたが「私への八つ当たり」・・・

私が担当していた投手(このサンデー・チャペルに参加している当時の某スーパースター)に至っては、試合で自身が活躍した時は何事もなかったかのように普通にシャワーを浴びて帰宅しますが、調子が悪かったり負けた時には、真っ先に私の元へ駆けつけ「今日のお前の施術が悪かったから負けたんだ!二度と俺の身体に触るな!」と罵声を浴びせて何かを破壊してから帰って行くのです・・・

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またもう一人の野手は本来とても優しさのある良い選手なのですが、やはり気に入らない出来事や試合中にミスをすると自分への不甲斐なさから「破壊行動」にいたってしまうという欠点を持っていました。

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他にも、チーム内でもめたり破壊したりという行動を起こさない代わりに、試合中に相手選手ともめて「乱闘」に持ち込むのが得意な選手もいました。

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こんなことを書いておいて今更ですが、彼らをかばうとすると「本当に野球が好きで、常にレベルの高いパフォーマンスを発揮すること、自分に対するハードルを上げている」選手たちなのだと思います。

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そんな彼らが何故「サンデー・チャペル」なのか?

おそらくは、キリスト教の教えとする「懺悔」なのでしょう。
プロの選手として常に最高のパフォーマンスを発揮しファンを喜ばせると同時にチームの勝利や自身の活躍が自分の生活を成り立たせる手段になりますから、ミスしたり負けたりすることはプレーする選手にとっては起こって欲しくないことなわけです。一生懸命プレーしているからこそ、ミスや敗戦を自分自身として許せない・・・

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そんな精神状態の中で「許せない自分」に対する怒りの矛先を物に当たる事で解消しようとしてしまう。
でも自分でもイケナイことだと理解しているのです。わかっているのに「そういう行動に出てしまったことを「悔い改めよう」とする場所が「サンデー・チャペル」なのでしょう。

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「悔い改めれば」何をやっても良いということではありませんが、事の善悪を理解している選手が悪いことをしてしまったことに対して素直に反省しようとする行動や考え方は必要なことだと思います。
ただし、本来ならば一社会人として「事の善悪」を理解しているなら最初から悪い行動や言動を取らないように自分自身でコントロールする術を身に付けてておかなくてはならないと私は思います。

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残念ながらプロの野球選手たちは(たぶん野球以外もあるとは思いますが)小さい頃から野球に明け暮れ、人間としての常識やマナー、道徳を心得ていない選手が多いように思います。
そんな選手たちを教育するのも球団やトレーナーの仕事でもあるわけです。

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ただ、こういうシステムがありそれを利用して自分自身を戒めながら成長させて良いプレーにつなげようと努力する行動は必要なことなのかも知れません。
まあ日本では考えられないことですが・・・

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もうひとつ日本では考えられないこととして、さすが多国籍・多人種の集まるメジャーリーグならではの経験としてキリスト教ではなく「ユダヤ教」信者の選手がいることです。
私がドジャースに在籍していた2004年のシーズンでの出来事でしたが、当時ドジャースはナショナルリーグ西地区の首位を快走していましたがオールスター後のトレードで失敗を重ね10ゲーム以上離していた2位との差を1ゲーム差まで追い上げられる状況に陥っていました。

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そんな状況で迎えたシーズン終盤の首位決戦の時に、当時ドジャースの4番を打っていた「ショーン・グリーン」というスター選手が「ユダヤ教(ジュイッシュ)の日」と重なり試合に欠場する・・・ということがありました。

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未だ良くわかっていませんが、ユダヤ教の日は戦うということだけでなく日常生活においても自然に戻りゆっくりと過ごさなくてはならないようです。
例えば「テレビを見る」「パソコンでインターネットを使う」ことも許されないそうです・・・詳しいことはわかりませんので、詳しい人がいたら聞いてみて下さい。

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このユダヤ教の日の前日の新聞では「ショーン・グリーン」は明日試合に出るのか?という見出しが載っていたくらいです。
結局「グリーン」は球場には来たものの試合に出ることなく、私服のままクラブハウスでのんびりしていました。
(本来ならば自宅で休むはずですが、さすがにチームメイトの気持ちも考えたようです)

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こんなことがある「メジャーリーグ」まだまだ色々な裏話はあると思います。
スポーツと宗教の関係がこんなに密接だったということもメジャーリーグならではのことだと思います。
これからもメジャーリーグからは目が離せませんね!

広報室
湘南医療福祉専門学校