湘南医療福祉専門学校

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深澤先生のブログ「東洋医学とスポーツ#2」

前回は「東洋医学とスポーツ」の関わりに関するお話をしました。
今回からは、もう少し具体的な部分のお話をしてみたいと思います。

スポーツ選手に多い障害としては「腰痛」が挙げられますが、私の専門としていた野球という競技では当然「腰痛」に苦しむ選手が大半を占めるものの、競技の専門特性を考えるとやはり「肩・肘」の障害が最も多いと思われます。

硬式野球ボールの大きさは直径72.9mm~74.8mmで重さは141.7g~148.8gです。
このボールを毎日のように投げるわけですから「肩・肘」の障害が起きても何ら不思議ではありません。
1日に投げる数はポジションによって異なりますし、その投げる強さも投手と野手では違いますから同じ目線で見ることはできませんが「野球」というスポーツをする以上「投げる」ということを切り離すことはできないのです。

選手たちは、この「投げる」という事に対して故障を起こさないように日々トレーニングで鍛えメンテナンスして予防はしています。
しかし、試合になれば普段の力以上のパフォーマンスでボールを投げようとしますし、練習でも強いボールを投げるために取り組んでいます。

障害のメカニズムとしては、肩・肘のパーツだけに問題があるわけではなく、姿勢や下肢の使い方、下肢と体幹の使い方、そこから上肢に連動させていく過程のどこかに問題が発生しているのです。通常「肘関節」は投球側の肩関節より上方に位置して使わなくてはなりません。しかし、蓄積された疲労や試合中の精神的疲労などからこの位置関係が崩れて、肘関節が肩関節より下がったところから無理矢理押し出して投げるような動作が見られることは少なくありません。

この状況で投球することにより、肘関節の内側に必要以上のテンションが懸り炎症を起こし易い原因となり、その状態が続くと肩関節の前方にも負担が懸り肩痛を引き起こす原因にもなります。
こういう状況が継続されることで、肩関節や肘関節の障害が起きてしまうのです。
これも初期の段階でリカバリーできればまだ大きな故障にはならないのですが、この状況のままプレーが継続されると「肩腱板損傷・断裂」「内側側副靱帯損傷」などの大きな障害が生まれ、結果外科的な手術を受けなくては回復できないという悲惨な状態になってしまいます。

私は、このような大きな障害にならないように日々選手たちのコンディションをチェックして無理な状況が生まれていないか?を考え対応してきました。
もちろんチームのメディカルスタッフ全体でこのようなテーマを掲げて活動していますが!
その対応策のひとつとして鍼治療を良く使いました。鍼治療の良いところは急性期の炎症にもアプローチできる点です。
通常、急性期にはマッサージ治療は行いません。しかし、鍼治療なら炎症や痛みの抑制を行えるのでプロ野球選手のような毎日プレーしなくてはならないアスリートには特に有効な手段だと思います。

肩関節痛が起きている時に見られる多い症状としては、棘上筋・棘下筋・上腕二頭筋長頭腱などの損傷です。これは筋疲労が起きて肩関節を安定した状態で動かせないことからインピンジメントを起こし炎症が広がり筋線維の損傷を起こすとなどが考えられます。この痛みのポイントに直接的に単刺で刺激したり置鍼して症状を落ち着かせ痛みを軽減させます。あわよくば痛みが取れれば・・・とも考えます。

炎症の急性期であれば遠心性に鍼を打ちます。回復期に入って活性化を起こさせたいのであれば求心性に鍼を打ちます。
この考えは前回の陰陽・五行説に則って鍼治療を行うというお話をさせていただきました。

このような施術を繰り返し行うことで、軽傷であればある程度プレーを続けながらでも対応が可能になります。仮に故障者リストに入り休みを取らざるを得ない状況でも、復帰までの期間を短くすることも可能です。

こう考えると、日本のスポーツ界においては「鍼治療」というものが欠かせない存在になっていると思います。
実際に私がメジャーリーグで仕事していた時でも、鍼治療を認めてもらうまでには時間がかかりましたが(この話は後日詳しくお話したいと思います)、鍼治療を認めてもらってからは、DL(故障者リスト)に入らずプレーしながら回復できた例もありました。
今やアメリカのスポーツ界でも「鍼治療」の必要性を認識してもらっているほど重要な治療方法になっているのではないでしょうか。

皆さんも世の為人の為、アスリートの為に確かな技術と知識を身に付け「鍼治療」で世界に飛び出してみてはいかがですか?
さあ、頑張りましょう! 
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