湘南医療福祉専門学校

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深澤先生のブログ「東洋医学とスポーツ#5」

前回はスポーツの現場で「鍼治療をどのようなタイミング」で行っていくのか?というお話をさせてもらいました。
今回からは、スポーツの現場で実際によく起こる障害・外傷などに対して「鍼治療」をどう取り入れていくのか?という部分にスポットをあててお話していきます。

野球のプレー中に良く起こる「打撲」をテーマにしてみましょう。
打撲はいわゆる急性の外傷です。野球に限らず、コンタクトスポーツでは通常のプレー中でもよく起こる外傷です。
しかし「打撲」を簡単に考えてしまうと後が大変です。予後を良くするためにも可能な限り早い段階での処置が重要です。

プロ野球をご覧になったことのある方は、おそらく一度くらい目にしたことがあると思いますが、デッドボール(投球が打者の身体に当たってしまうケース)や自打球(自分で打ったボールが直接自分の足などに当たってしまうケース)を受け倒れ込んでいる選手にトレーナーがかけより、なにやら怪しいスプレーをひと吹き・・・というような場面があります。

これは、打撲をしてしまった部位に急激な炎症症状が起こるので一時的に冷却スプレー(コールドスプレー)を吹き付け炎症を抑えようとしているのです。そしてテープで圧迫・・・
RICE処置の中で試合中にできることを行っているのです。動けなくなるほどひどい状態では選手交代しますが、通常はそのまま試合に出場しますからひとまず応急処置をして試合後にもう一度処置しなおします。

さて、我々鍼灸師の出番はここからです。
試合中には簡易的な処置しかできませんでしたが、試合後はしっかりと処置して明日以降の回復をより早く円滑に進めます。打撲を受けた部位は通常「熱感・腫脹・皮下出血・・・」などがみられます。
西洋医学的には、これらを抑制するために先述したRICE処置を行い状況によっては干渉波などの物理的な刺激を加え炎症の除去に努めますが、東洋医学的にはこれらの処置以外に「鍼」というすばらしい武器があるので受傷した患部周囲に「鍼治療」を行います。

ここでも前回お話した「陰陽・五行説」に基づいて施術するわけです。
考え方としては「炎症」=「陽」ですから「陰」に導いてあげたいという考えになりますよね。「陰」に導くためには抑制の効果を高めたいので「遠心性」に鍼を打ちます。また、患部は陽の状態ですから刺激は軽度。
つまり患部周囲と関連のある部位数か所の浅いところで遠心性に鍼を打ち10分~15分程度置鍼します。

こうすることで熱感・腫脹を抑え皮下出血を滞らせることなく短時間で消失させられます。さらには石化沈着も避けられるようになるわけです。そしてこの効果を持続させるためにまたまた登場するのが「円皮鍼」です。
あとは状態・状況により冷湿布を貼ったりテープで圧迫しておけば改善はだいぶ早められ予後も良くなります。 

このような「鍼治療」を含めた処置を2~3日継続して行い、患部の状態と選手の感覚を確認していきます。必要であればもう1~2日続けます。打撲を軽く考え「痛くないから」と患部を放置していると石灰沈着や癒着が起こり、患部に関係する筋肉の働きに支障をきたします。
このようなことがないように「迅速に適切な処置」をすることが選手のためになるのです。

アイシングだけ、湿布だけでほとんど処置をしない場合回復までに2~3週間、ひどいときには何カ月もその後遺症に悩まされてしまいます。
しかし、適切に処置して「鍼治療」を取り入れていけば1週間程度で不通にプレーすることが可能になります。「鍼治療」を何日か続けて行い炎症が治まり症状が改善してきたら4日目くらいからは「回復」に向けた処置に切り替えます。

鍼治療で回復を促進させるには、今度は「陽」の状態になれるように鍼を打ちます。つまりは「求心性」を基本として「活性化」を狙うわけです。
また、石灰化・癒着を防ぐためにものすごく痛いのですが患部を求心性にマッサージします。このような作業を行うことでより早く正常な状態に戻ります。 

受傷レベルに関わらず「打撲」に対しては、可能な限り早く適切な処置・治療ができるように知識・技術を磨いて下さい。
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