湘南医療福祉専門学校

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深澤先生のブログ「東洋医学とスポーツ#21」

先日、インターネットで「東洋医学」と「スポーツ」に関わることで面白いネタは無いものか?と検索していたのですが、先ずはこの二つのキーワードで自分が書かせていただいているこのブログが引っかかったことに思わず笑ってしまったと同時に、ネットの怖さを改めて感じました。

まあそんなことはどうでも良いのですが、それよりも私個人として非常に興味の湧くキーワードを見つけました。
(あくまでも私的な興味です!)

今、湘南医療で学ばれている皆さんにとってはおそらく知らないネタでしょう。
1987年、一人の偉大な野球選手が引退を表明しました。
その人は東京読売巨人軍の「江川 卓」投手です。江川選手の名前くらいは聞いたことがあるとは思いますが、その現役時代や最盛期を知っている人は私たちの世代以上の人たちだと思います。

私にとって小・中・高・大と歩んだ野球人生の中で憧れていた選手が二人いました。一人はこの「江川 卓」選手であり、もう一人は現巨人監督の「原 辰則」選手でした。
但し、誤解のないように言っておきますが、私はアンチ巨人です!あくまでもプレーヤーとして憧れた選手たちです。 

江川選手は、作新学院高校・法政大学と活躍されていた姿を、原選手は東海大相模・東海大学と活躍されていた姿を見て自分なりに憧れと目標にさせていただいていたくらいです。
でもプレースタイルはまったく私とは違うので、何を目標にしていたか?と言うと、江川選手の打者に全力で立ち向かって行く気持ちの強さ、原選手のここぞという時に結果を残す精神力の強さを目指していたのです。

そろそろ、本題に入りましょう!(野球の話になると止まらなくなるので・・・)

その1987年に引退した「江川 卓」選手ですが、実は引退会見の時にこんな発言をしたのです。以下ネットから引用させていただきましたので参考までにご覧ください。 

「昨日も言ったように直接の原因は肩です。入団4年目(82年)の夏ごろから悪くなり、自分の思うボールがいかなくなった」。
肩について最も悩んだのは、 11勝をあげた7年目(85年)の夏。夫人に「やめるかもしれない」ともらしたほどだが、思い直して中国鍼の治療を始めた。ファンはもちろんチームメートにも内証だった。それが効果を見せ、86年は16勝をマーク。だが、今年になり鍼の効果が持続する期間が短くなった。天王山の広島戦の前、どうにもならなくなった。
しかし、優勝をかけた大事な時期。肩胛骨(けんこうこつ)の裏の患部に直接鍼を打てば即効性はある。でも、患部周辺に打ってきたそれまでの治療と違い、投手生命はそれで終わりと鍼の先生にも言われ、来年からはプレーできない最後の治療だった。
「来年は十年目。後楽園のドームでもやりたい。女房や周りの人にも相談した。でも決断して、鍼を打ってもらった」
広島戦では、小早川選手にホームランを喫し、負けた。ファンの前で涙を流した。
だが、江川選手は「あの日のピッチングは近年では一番良かった」とキッパリ言い切った。
(以上、87年11月13日付け読売新聞)

とまあ、こんな引退記者会見での発言があったわけですが・・・

この中で、注目すべき発言が「肩胛骨(けんこうこつ)の裏の患部に直接鍼を打てば即効性はある。でも、 患部周辺に打ってきたそれまでの治療と違い、投手生命はそれで終わりと鍼の先生にも言われ」という部分です。

当時、私自身も東洋医学を学んでいた頃ですから江川選手のこの発言にとても敏感に反応してしまった記憶があります。「鍼治療を行ったら即効性はあるけど、投手生命が終わってしまうような部位はあるのだろうか?」

まあ東洋医学を専門に学んできたわけではない江川選手にとって、鍼の先生が言った一言を正確に理解していたわけではないと思います。もちろんこれまで、この先生を信頼しその施術によって選手として活躍することができていたという実績もありますから、特に多くを語らなくてもお互いにニュアンスでマッチしていた部分があったのだと思います。

ただ、それでもプロ野球の偉大な選手でありその引退会見で世の中の人たち野球ファンに向けて言葉を発せなくてはならない人だけに、鍼の先生の一言を正確に理解し正確に伝えなくてはならなかったと思いますし、また鍼の先生もそういう選手が正確に伝えられるよう明確に説明する必要があったのではないでしょうか。

私もプロ野球の選手たちを診させていただいてきました。その中で一番気をつけている部分がこの正確に伝えるという部分です。
そのために東洋医学を学んでいない人たちにもわかりやすい言葉でわかりやすく説明するということを心がけています。

我々のような技術職に就く人たちは、医学的な知識を吸収することによってある意味偉くなったような勘違いを起こしやすいのです。そうすると専門的な言葉だけを並べて、理論だけで追求しようとします。これでは患者様は理解できないと思いませんか?
「誰にでもわかる言葉、誰にでも理解してもらえる説明」これができる人こそ本当の東洋医学従事者だと私は常に思っています。

この江川選手を診ていらした先生を批判するつもりはありません。ただお互いの中で理解できていると思っていることが、万人には通用しないということを考えなかったことは失敗だったのではないでしょうか。

でも気になります・・・

即効性はあるけど投げられなくなるツボ?果たして何を指していたのでしょうか?
私が野球界で働かせて頂いている間、いつも考えていたのですが・・・この世界に入り29年、未だこの結論が出せていません・・・

ということで、強引にまとめると東洋医学に従事する者の基本として、理論や知識、技術を吸収し身につけておくことはとても大切なことではありますが、患者様に対する時はその詳細を可能な限り簡潔に正確に伝えられるようにしなくてはならないということです。

奢ることのない、いつも感謝と熱意で接することができる施術者になって欲しいと思いますし、自分もこの想いをこれからもずっと持ち続けていきます。
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