深澤先生のブログ「Hand of a God #7」

2017年10月03日(火)

<深澤英之 先生>

城西大学野球部、女子駅伝部、陸上部トレーナー

ヤクルトスワローズ(現 東京ヤクルトスワローズ)一軍トレーナー兼リハビリ担当

ヤクルトスワローズ(現 東京ヤクルトスワローズ)二軍トレーナー、二軍トレーニングコーチ

ヤクルトスワローズ(現 東京ヤクルトスワローズ)一軍トレーナー兼リハビリ担当

ロサンゼルスドジャースアシスタントトレーナー

株式会社ルートヴィガー
設立(広尾店、銀座店)

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2017年も秋の陽気が深まり、今年も終わりが近づいているんだなと哀愁に浸っております。毎年のことですが、夏の甲子園大会が終わった時点で私の一年はほぼ終わってしまいます(気持ち的にですが・・・)。そしてプロ野球やメジャーリーグの日本シリーズやワールドシリーズが終わると、私の一年は完全に終了です(気持ち的には・・・ですが)。

もう秒読みです・・・

さて、そろそろ本題に入りましょう!前回は「膝関節の障害」に関してのお話をさせていただきました。今回は「下肢の障害」特に「大腿部の障害」について考えてみたいと思います。

スポーツの世界において下肢のケガとして比較的大きなケガにつながってしまうのが「大腿部の障害」で、特に「筋断裂」や「筋挫傷」といったところでしょうか。筋断裂も筋挫傷も大きいくくりでみれば同類ですが、定義的に考えると筋断裂は「部分断裂」や「完全断裂」に区分けされ、いわゆる「肉離れ」の状態として考えます。

筋肉が断裂するということは、動作の中で遠心性収縮が過度に起こりテンションがMAXにかかっている時にそれ以上の筋収縮が起こって、これに筋繊維が耐えられず繊維がはがれてしまうということです。断裂が起こる場所は筋腹であったり筋腱移行部であったりしますが、比較的移行部で起こることが多いのではないでしょうか。

筋挫傷も筋繊維に傷が入るという点では似ていますが、発生機序としては外部からの刺激が直接体表面から入り筋肉と骨を含む組織の損傷と考えた方が良いでしょう。「打撲」と言われるものがその代表例です。

このような外傷・障害がスポーツをプレーしている時に、大腿部のケガとして多くみられるものです。発生機転として「筋挫傷」は、コンタクトスポーツの接触プレーで起こりやすく、いわゆる外傷です。野球では「デッドボール」「自打球」というものがポピュラーですが、野球の場合発生しやすい部位が上肢や下腿が多く大腿部の筋挫傷は、やはりクロスプレーになる接触プレーで起こります。

筋断裂(肉離れ)で考えてみると、野球でも「走る」ということがキーワードになります。打者が打ってすぐに走り出す瞬間やベースを駆け抜ける際にアウトかセーフかギリギリになりそうな瞬間で、プレーヤーの筋出力がMAXになろうとする時に多く起こります。他にも守備で必要以上に下肢の伸展を行う瞬間に起こることもありました。

選手たちはプレー中必死なので、アドレナリンの分泌も高まりその日のコンディション以上のパフォーマンスを発揮してしまうことが多々見受けられます。そんな時にこのような障害が起こりやすいのです。ケガを予防するためにコンディションを整え、事前準備を怠らないようにはしていますが、自分で感じている以上に筋疲労がおきていることが実際にはよくあることです。

さあでは、もしこのような「肉離れ」が起きてしまった場合、どう対処して治療していくか?ということを考えなくてはいけません。肉離れでもⅠ度からⅢ度までの重症度の違いがあります。軽度であれば、RICE処置を行って置鍼して湿布などで消炎鎮痛を行えば1週間程度で回復できるものもありますが、大抵は中等度・重度といったレベルでの障害が多いです。

中等度~重度になると競技復帰までは、1か月から半年と非常に幅が広く短期間での復帰は非常に難しいものです。それでも受傷直後の対処と治療が適切であれば、うまくするとこの半分の期間での回復も夢ではありません。但し、個人差や受傷機序の違い、環境・状況の違いがありますから100%ではありません。

それでも、1日も早く回復させられるよう対応するのが我々の役目ですから、全身全霊をもって気合入れて臨みましょう!(笑)

先ずは基本となる安静状態の確保と炎症の抑制が必要です。そのためにアイシングを行ったり、アイスマッサージを行ったり、環境によっては干渉波やマイクロカレントなどの物理療法と併用します。その後患部を含む周囲や起始停止部に鍼を打って置鍼します。この時も炎症の抑制を主に考えていますから「遠心性」に置鍼するのがベターです。

このような治療を2~3日続け、熱感と腫脹の変化で良好状態であれば、ここから回復のために「活性化」を目指します。この日からアイシングは止め、物理療法でも併用するのは温熱刺激です。そして鍼治療も「活性化」が主になりますから置鍼の際の方向も「求心性」に変化します。

そして、損傷した筋の収縮レベルをチェックしながら単刺で患部周囲に刺激を強めに入れ、血流の増加を目指していきます。このような方法を地道に続けることで、回復力が促進され通常よりも早期での回復につながるのです。その間、損傷した筋繊維の収縮や伸長のレベルをチェックしながら、何度も何度も単刺で刺激し、筋肉の収縮・伸長レベルを正常に近づけ、動作しても重力をかけても痛みが出ないことを確認しながら治療しましょう。

このように、対処が早く適切であれば中等度以上の肉離れでも「早期での回復」が実現できるようになります。もちろん競技復帰したあとも継続的に治療を行い再発防止に力を注がなくてはなりません。私がドジャース在籍時に当時の4番バッターがシーズン残り15試合くらいで試合中に右ハムストリングスの肉離れを起こしてしまいました。その時ヘッドトレーナーから「お前はこれをどう思う?」と質問され、私は「徒手検査や触診で中等度の肉離れで、復帰まで約一か月くらい」と返事をしました。

しかしヘッドトレーナーから「お前の診たては正しい。でもこの選手は契約上の問題もあり、明日もプレーしなくてはならないから何とかしろ!」という無茶振りをくらわされました・・・「仕方ない、やるしかない」と思い。先述した方法で対処と治療を行い、この日だけで受傷後と夜間と翌日の午前の3回に分けて鍼治療を行い、最後はテーピングの力を借りながらなんとか翌日のナイター出場にこぎつけたという経験があります。

これもその後シーズン終了まで、徹底的に鍼治療を続けその年のプレーオフにも出場できました。残念ながらプレーオフで負けてしまったので、そこで全てのシーズンは終わったのですが、この選手は翌年もキャンプから全開でプレーすることができたのです。

かなり無茶振りであり、鍼治療だけでなく物理療法も併用して行ってきましたが、それでも適切に対処・処置できれば短期間でプレー復帰できるという現実を体験できた瞬間でもあります。

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